TimeDripperというFirefox拡張機能を作ったので、実験的にリリースしてみた。
こちらでインストールできる。
TimeDripper – Get this Extension for 🦊 Firefox (en-US)
この拡張機能を使うと、面白くてついついずっと見てしまうような楽しいサイトへのアクセス時間を制限する。対象となるサイトは自分でリストを編集して管理できる。
……と、ここまでなら同様の機能を持った既存のソフトウェアが複数あるのだが、TimeDripperの最大の特徴は、閲覧可能時間がちょっとずつ回復するという点。ゲームにはしばしば、時間経過によって回復する「魔力」「スタミナ」「エネルギー」などを使って行動する仕組みがあるが、それに似ている。
回復ペースは、自分で細かく設定できる。
この仕組みが、とても良いユーザ体験をもたらす。自分の性格やライフスタイルに合わせて閲覧時間のコントロールができるのだ。
ズルをしたい気持ちを抑制する
今まであったようなサイトブロッカーで閲覧制限をすることを考えてみよう。あるユーザが、次のようなルールで閲覧時間を制限していたとする。
- 1日に30分、楽しいサイトを閲覧できる
- 閲覧時間は日付が変わるときにリセットされる
そんなある日、午前中に面白い動画を見つけてしまい、うっかり1日の閲覧時間を一気に使い切ったとする。その日はもう楽しいサイトを見ることはできない。本来は次の日まで我慢すべきなのだが、「丸一日我慢するなんてちょっと厳しすぎやしないか? ちょっとズルをしてもいいよね?」という気持ちが湧いてくるだろう。
そして、ちょっとしたズルはちょっとでは済まなくなる。拡張機能を一時的に停止して、そのまま使わなくなってしまう。あるいは、別の端末や別のブラウザで楽しいサイトを見始め、1時間が経過する。
厳しすぎるルールは、ルールを破る口実となる。
TimeDripperには、そんな厳しさがない。もっと楽な気分で使える。うっかり閲覧時間を消費してしまったとしても、少し待てば回復する。次に休憩をとる頃には閲覧時間が溜まっているので、そのときにまた息抜きをすればいい。これくらいなら我慢できる。
自分を知り、良い設定を考える
TimeDripperの閲覧時間の「回復」は、
- 最大値
- 回復頻度
- 一度に回復する量
の3つのパラメタで調整ができる。デフォルトの設定は、「1分間に制限時間が5秒回復し、最大値が15分」という内容になっている。1時間あたり5分溜まる計算だ。連続閲覧時間は、長くても15分におさまる。
自分の性格やライフスタイルに合わせてこの3つのパラメタをいじることで、ストレスなく集中力を維持するための設定を作り出すことができる。トータルの閲覧時間を制限することに主眼をおくか、見始めるとついついハマってしまう癖をどうにかしたいのかにもよるだろう。
- 「連続閲覧時間が長くなるのを防ぎたい」という場合は、Maxを少なくする。息抜き中にうっかり熱中してしまったとしても、すぐに閲覧時間が枯渇する。
- ちょっと溜まったらすぐに使いたくなってしまうタイプの人は、回復頻度を低め (たとえば数時間に1度) にして、一気に回復するようにすると良い。回復頻度が高いと、「何秒溜まったかな?」と気になってしまう。
- 「損した気分」になることを避けたいタイプの人は、最大値を極端に少なくして「溢れるのが当たり前」にしておくのも良い。「溢れると損」「寝る前に使い切らないと損」と思わなくて済む。
- ある程度の自由度をもって使いたい人は、最大値を大きめにし、半日で満タンになるくらいのペースで回復させるのがおすすめ。朝起きたら30分くらい溜まっている。その日の気分で消費していく。うっかり枯渇してもなんとかなる。
コンセプトとネーミング
TimeDripperのコンセプトとネーミングを考えるにあたり、「心地よく使える」というイメージを重視した。対象となるサイトの閲覧を「集中力を削ぐ、悪いもの」とみなし、それを「ブロックする」という方向ではなく、 ひとときの楽しみを肯定的なものとして扱いたかった。
そこで、「少しずつ溜まっていって、消費すると無くなってしまうけれど、とても嬉しいもの」のイメージに合致したのが「コーヒーの抽出」である。ドリッパーにお湯を注ぐと、ぽたぽたとコーヒーが落ち、器が満たされる。滴下式の水出しコーヒーなら、一杯ぶんを抽出するのに数時間かかる。時間をかけて淹れた良い香りのコーヒーでひとときの安らぎを得る。
これから
今後、さらに心地よく使えるようにするための方法を考えている。たとえば、時間帯によって閲覧対象を無制限にするといったニーズもあるだろう。そこで、溢れた閲覧時間を「ボトル(仮)」に貯められる仕組を考えている。「ボトル(仮)」を消費することで、ここぞというときに使うと閲覧時間を補充できる。なるべくユーザの工夫次第で色々な生活スタイルにフィットする仕組みを考えている。
それから、気が向いたらChromeにも移植するかも。