Outer Wildsは良い

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Outer WildsのNintendo Switch版が発売された。私はこの作品をPS4版でプレイしたのだが、ぜひSwitch勢のみなさん、そして今回Outer Wildsを知った人にもプレイしてほしいので、ちょっと語ることにする。

Outer WildsはオープンワールドSFゲームである。さらに、同じ時間を繰り返す「ループ物」の要素が加わる。そして、プレイヤーは、ただ好奇心だけに衝き動かされてて宇宙を歩き回り、飛び回る体験ができる。

謎解きといえば謎解きなのだが、このゲームは「謎」と「それ以外のもの」の境界がない。「ステージに仕掛けがあって、解くと先に進める」といったパズル的な物ではない。よくわからない世界に放り出され、その中で好奇心を持ち、それを満たすために行動すると、なんだかいろいろわかってきて、あそこに行きたい、あれを試したい、これは何故だろう、という気持ちが湧いてくる。

主人公は成長しないし、アイテムを手に入れて強くなることもできない。パラメタは「燃料」「酸素」「体力」だけ。蓄積されるのは知識だけである。プレイヤーの原動力は好奇心であり、その報酬は知識である。

……というと非常に曖昧なので、もうちょい具体的な内容の話をする。ネタバレ無し。チュートリアル終了後すぐにわかる内容しか書いていない。

どんな内容か

世界

ひとつの太陽と複数の惑星からなる星系を舞台にしたオープンワールドを探索していくゲームだ。「星系」がまるごと舞台になっている。でっかい太陽の周りをおもちゃみたいな惑星がぐるぐるまわっている。主人公の故郷である地球っぽい惑星をはじめ、地表にバキバキの亀裂の入った惑星、砂だらけの惑星、赤い峡谷のある惑星、その他いろいろと珍妙な惑星がある。世界はかなりデフォルメされていて、隣の惑星には宇宙船で数分で飛んで行けるし、徒歩でも数分で惑星を一周できる。

そんな星系を、ジェットパック付きの宇宙服を着ていて3次元的に動き回ったり、ちょっとポンコツな宇宙船で飛行したりすることができる。

22分のループ

この冒険には22分という時間制限がある。この星系は、あと22分で終了する。主人公が目覚めてから22分後、真ん中にある太陽が超新星爆発し、なにもかも吹き飛ばされてしまう。

当然、そこにいる主人公も生きていられるわけがなく、死亡する。死亡すると、探索中のスクリーンショットが走馬灯のように表示され、目を開けるとそこは22分前。どうやら主人公は記憶を引き継ぎながらループしているらしい。

なお、22分以内にうっかり死んだ場合も、同じ時刻に戻る。

ちなみに、ループは毎回宇宙船の発射台のそばの焚き火からスタートするのだが、そこでマシュマロを焼いて食べられる。上手に焼かないと黒焦げになる。黒焦げマシュマロも食べられる。ゲーム進行上、これといった意味はないのだが、この世界では焼きマシュマロは宇宙の旅に欠かせないものということになっている。

住人

この星系の住人も紹介しておこう。

物語が始まるのは「木の炉辺 (Timber Hearth)」という、森に包まれた惑星、この星系の惑星の中では最も地球に近い環境だ。主人公はそこに住むHearthianという種族である。Hearthianは、青い肌と4つの眼を持つ、いかにも「うちゅーじん」という感じの容姿だ。

好奇心旺盛で宇宙探索もしているのだが、ちょっぴりゆる〜い感じの種族で、宇宙飛行士やエンジニアも微妙に抜けたところがある。宇宙船の発射台が木造だったり、焚き火でマシュマロを焼きたがったりと、なにかと素朴な印象が強い。Hearthianの先輩宇宙飛行士は各惑星に探索に行っていて、それぞれの調査活動をしたり、お気に入りの楽器を奏でたりしている。無線受信機を空に向けると、先輩宇宙飛行士の奏でる音楽が聞こえてきて和む。ちなみに、サントラを見るとわかるが、その曲は “Travelers” と題されている。ひんやりした宇宙を舞台とするゲーム世界にほんわかしたムードをもたらしてくれる種族だ。

そしてもうひとつNomaiという種族。こちらはすでに絶滅しており、その文明の痕跡が星系のいたるところに見られる。3つの目を持ったモフモフした種族で、Hearthianよりもだいぶ先進的なテクノロジーを持っていたようだ。Hearthianも、Nomaiの遺物をちょっとお借りして宇宙探索に活かしている。

主人公は「Nomai語翻訳ツールを携えたHearthianの宇宙飛行士」として旅に出る。Nomaiの言語で記された文書に翻訳機を向けると、解読できる。旅先でNomaiの遺物らしきものを見かけたらチェックしよう。

目的

主人公には明確な目的があるわけではない。Nomai語の翻訳機を持った新米宇宙飛行士としてちょっと探検に行ってくるのが仕事である。仕事に行った先で誰かに何かを依頼されるわけでもないし、「22分で星系が滅びるから滅びないようにどうにかしてこい」という話でもない。

物理

Outer Wildsの舞台は、物理的なリアリティラインの設定がなかなか面白い。重力の表現や惑星の自転公転、さまざまな天文現象が描かれているが、現実世界の物理からはだいぶ乖離がある。隣の惑星に1分で行けるし、木造の宇宙船で星系のどこにでも行き放題。しかしゲーム世界の中の「物理」は、物語の面でも操作性の面でも良く整合性がとれている。現実世界の科学をモチーフにした「ちょっとちがう科学」をベースにしたハードSFだと私は思っている。

こうやってプレイする

観察してみよう

いちばん大切なのは「観察」だ。この世界はとても静かだ。会話のが発生するのは村や宇宙飛行士のキャンプくらいで、あとは無人である。

しかし世界は動いている。惑星は回っている。時間経過によって変化する。22分のサイクルの中で変化していくので、よーく観察してみよう。惑星を上空からよく眺めてみよう。22分後に必ず起こる超新星爆発の時、太陽がどうなるかじっくり見てみよう。「あのあたりでは何が起こっているのか調べてみたい」と思ったら、実際に足を運んで、自分の目で確認してみよう。観察と試行錯誤を繰り返すと、22分でできることも変わってくる。

不可解な現象には、なにか理由があるはずだ。考えてみよう。だいたい、22分後に太陽が爆発するのも、自分が記憶を保持したまま22分をループしているのも、なかなかおかしな話である。何故なのだろう。

忙しい人でも安心の「1回22分」

1回の探索が必ず22分におさまるというのは、忙しい人にとても優しい。飛び立って3分でうっかり事故って死んだりすると (わりとよくある)、さすがにもう1回チャレンジしたくなるのだが、だいたい30分以内に一区切りできる。「やめ時」があるので、延々とプレイしてしまう危険性は低い。小皿にマシュマロを2〜3個出しておいてループ開始時に主人公と一緒に1個食べることにすると、「ゲームは1日だいたい1時間」を守れる。

操作にはちょっとコツがいる

このゲーム、操作の仕組み自体はシンプルなのだが、そのシンプルな3次元操作によって、強い重力の働く惑星上も無重力空間も移動できるし、惑星間飛行も、狭い構造物の内部探索もできる。そして、しくじると宇宙船がクラッシュしたり、体を岩にぶつけたり、宇宙空間に放り出されたりする。けっこう難しいという点は覚悟してほしい。そして、この難しさは「運動神経」の問題ではないという点については安心してほしい。

素早いアクションは一切不要。必要なのは素早さではなく丁寧さである。決して易しいゲームではないが、ゆっくり丁寧にプレイすることを許してくれるゲームだ。決して私は素早い操作を必要とするアクションゲームがさっぱり出来ないタイプなのだが、無事にクリアできた。

以下に、具体的な操作のコツを3つ挙げる。

1. 座標系に慣れる

座標系は「自分」が基準である。これだけなら普通のことなのだが、このゲームでは「自分の足元の方向 = 地面の方向」が成り立たない場面が多い。「地面が下」というイメージを持っていると頭が混乱する。たとえば、惑星に向かってまっすぐ飛行している場合。進行方向に地面が見えている状態だ。このままでは激突してしまうので速度を抑えながら着陸したい……という場合、加速すべき方向は「上」ではなく「後ろ」である。

2. ジェットを優しく噴く練習

探査船を降りて宇宙服で行動する場合、ジェットパックを噴きながらジャンプする場面も多くなる。特に重力の小さい環境でジャンプするのがけっこう難しい。うっかりボタンを強く押し込むと天井に脳天を強打したり、目標地点を大きく飛び越えてしまったり、宇宙空間に放り出されて帰って来られなくなったりする。

全力で噴射する必要のある場面というのはほとんどないので、とにかく優しくボタンを押す練習をしよう。小さな噴射を小刻みに繰り返せばホバリングのような動きができる。

ジャンプでどこかに飛び移りたいときは、弱めの噴射を何度か繰り返し、着地地点を調整するのがおすすめ。一発で目標地点まで飛ぼうとすると、行き過ぎそうになったときに調整が効かない。

このゲームでは、場所によって重力が変わってきて、重力によって操作感覚が変わってくる。重力の大きな惑星ではズシーンと地面に引っ張られるし、重力の小さな場所では簡単に吹っ飛んでしまう。惑星に到着して船を降りたら、安全な場所でほんのちょっとジェットを噴いて感触を確かめると事故が減る。

3. 方向調整と加速を同時にやらない

このゲームでは、無重力空間に浮かび、場合によっては太陽や惑星のまわりを周回する対象物を追いかけ、着地するという操作が必要になる。 これがなかなか難しいのだが、「方向調整と加速を同時にやらない」というのがコツ。

「速度同調」を行うと、視野の中央にある物体との相対速度を保ち続けることができる。宇宙船がドッキングする前のランデブー飛行のようなものだと考えるとわかりやすい。少し移動したら適当な箇所をロックオンして「速度同調」してひと休みし、落ち着いて視点を動かす。視点を動かすだけなら目標地点との相対位置が変化しないので、急がずゆっくり操作すればいい。そして、目標をセンターに入れ、いったん「速度同調」してから、左スティックを優しく前に倒し、前進する。

ある程度速度がついたらスティックから手を離してしまうと良い。そうすれば慣性だけで目標地点に向かっていく。左スティックは「移動」ではなく「加速」であることをおぼえておこう。スティックを入れっぱなしにするとどんどん加速してしまい、目標物に激突したり、目的地を逸れて宇宙空間にポーンと放り出されたりと、ろくな結果にならない。

慣性飛行中にまたズレてしまったら「速度同調→視点調整→ゆっくり前進」で微調整すれば、目標地点に確実に到達できる。

設定で「視点感度」を下げておくのも良い。視点の微調整がしやすくなる。ついでに3D酔いもしにくくなる。

どうしても詰まってしまったら……

このゲームはプレイヤー自身の探求を重視しているため、マーカーを追っかけていったり目の前にある「謎解き」をやったら話が進むというものではない。難しい箇所もある。

「どうしてもこの部分だけがわからない/できない」と諦めそうになったら、疑問点とキーワードをしっかり絞った上で検索しちゃっても大丈夫だとは思う。Outer Wildsのプレイヤーたちの「ネタバレを踏みたくない/踏ませたくない」という意識はけっこう強いようで、みなさん極力ネタバレしないように最小限の情報でアドバイスを書いてくれる。

よい旅を

もうちょっと具体的に書きたいことは色々あるのだが、Outer Wildsはネタバレにならないように紹介するのがなかなか難しい作品である。SF好きな人、知的興奮が欲しい人、静かなゲームでチルアウトしたい人には、ぜひとも小さな探査船で宇宙の旅に出てほしい。そして宇宙を気ままに散歩してほしい。自分自身の好奇心が、すばらしい物語に導いてくれる。

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