頭の中でいろいろな「料理」を思い浮かべてみよう。その中には、「レシピ」と呼ぶには少々抽象度が高く、「ジャンル」と呼ぶには具体的すぎる、そんな微妙なラインのものが存在するだろう。
今日は、そんな「抽象度の高い料理」の話をしよう。
抽象度の高い料理とは
「抽象度の高い料理」は次のような特徴を持つ。
- 作り方を短文で表現でき、料理の基礎スキルがあれば難なく作れる
- 食材が固定されておらず、アドリブが効く
- いかにも「冷蔵庫の在庫を処理するための名も無き料理」という感じにならなず、ちゃんとした料理の体裁になる
- 加熱時間や分量の調整がシビアではない
こういった特徴を備えた「抽象度の高い料理」の引き出しがあると、何かと便利だ。
料理の下手な人が自己流アレンジで料理をして失敗する。そして「料理下手の自覚のある人はまずレシピ通りに作れ」と言われる。しかし、アレンジすること自体が悪いわけではないし、料理下手ならアレンジはやめておけと言い切ることもできない。アレンジの仕方が悪かったのかもしれないし、アレンジすべきでないものをアレンジしてしまったのがいけないかもしれない。
世の中にはアレンジしてもOKな料理とダメな料理がある。「アレンジしてもOKな料理」、つまり「抽象度の高い料理」のリストを持っておくだけで事故は防げると思う。
レシピの例
自分にはどんな「抽象度の高い料理」のレシピを把握しているだろうか? と思って整理した。名前のついた既存の料理にもこれに該当するものがあるし、具体的な呼び方の思いつかないものもある。手順の簡単さよりも抽象度の高さに着目しているので、簡単料理や一行レシピともまた違う。
- 寄せ鍋 : 抽象度の高い料理の代表のようなもの。食材や味付けの相性は多少考慮する必要あり。
- 雑煮 : 正月に食べるものというイメージは捨てよう。具はなんでもいい。実際、正月に食べる伝統的な雑煮も、地域によってかなりバリエーションがある。餅は保存もきくし、思い立ったらすぐ焼けるし、加熱に鍋の準備も要らない。餅はもっと評価されるべきだと思う。
- 天ぷら : 衣をつけて揚げよう。それが天ぷらだ。よほどのことがなければ天ぷら以外の物が出来上がることはない。使い所の難しい食材が紹介されるとき、用途の例として高確率で登場するのが「天ぷら」なのだ。天丼にしても良い。
- ポタージュスープ : 野菜をコンソメで煮込み、ブレンダーで粉砕する。牛乳や豆乳、クリームなどを混ぜてポタージュにする。入れる食材の組み合わせもわりと自由だが、あまりかけ離れた色のものを組み合わせると見た目が美しくなくなってしまう。
- スムージー : 果物や小松菜など、生で食べてもOKな素材を冷凍しておく。牛乳に入れてブレンダーで粉砕する。リングフィットアドベンチャーをプレイしたときはリアルスムージー作りにハマった。冷凍に向かない素材や生食に向かない素材もあるので、作る前に一度調べること。
- ごろごろオーブン焼き : 3cmくらいの塊に切った食材を耐熱皿やオーブンペーパーに並べる。上に塩コショウとオリーブオイルとチーズをかけて焼く。なるべく食材のサイズにばらつきがないようにするのがコツ。
- クリスピードリア : 最近うちでよく作る、ドリアを横に薄くのばしたもの。オーブンペーパーになるべく広く薄く、
オリーブオイル→ごはん→具→塩→ホワイトソース→ごはん→具→塩→ホワイトソース→スパイス→チーズ→オリーブオイル
の順で広げて焼く。ミートソースの層をはさんでもいい。190℃15分くらい。かりっとした食感のドリアができる。おこげが食べたいという欲を満たそう。 - 鉄板朝食 : 忙しい朝や、夕食に鉄板を使った日の翌日におすすめ。鉄板に並べて一気に焼く。台所で作ってもいいし、テーブルに出してパーティーっぽく作ってもテンションが上がる。
おすすめメニューは、フレンチトースト、輪切りトマト、じゃがいものガレット、ハンバーグ、大胆に切ったキャベツ、目玉焼き、ベーコン、ホットケーキなど。焼きおにぎりなどの和風メニューもいける。“griddle breakfast” で画像検索してみよう! - スパイシー串焼き : ミックススパイスをまぶして串に刺してロースターで焼く。インド系食材店で売ってるミックススパイスやGABANのケイジャンスパイスがおすすめ。ヨーグルトにミックススパイスを混ぜて漬けるというのも良い。「ケバブ」という概念とも部分的にかぶる気がする。味付けにこだわりたければインドやトルコなどのスパイシー文化圏のレシピにあたるのもいい。
- 蒸し物 : 2階建てのせいろなら、肉は下味をつけて片栗粉をまぶして1階、野菜は2階へ。レタスやキャベツなどの葉物を肉の下に敷いてもいい。
- 回鍋肉 : Blueskyで教えてもらったが、回鍋肉も確かに抽象度が高い。「一度加熱した肉をよけておき、鍋に戻して野菜と合流させて味付けする」というのが回鍋肉の重要ポイントであり、その名の由来でもある。日本では薄切り豚肉とキャベツの組み合わせが主流だが、肉1種類、葉物野菜1種類が入っていれば回鍋肉になる。
その他にも
私はあまり作らないのだが、
- キャンプ飯として人気の「スキレット料理」
- 鍋一つで作る「キャセロール」
このあたりも抽象レシピに入るだろうか。
また、これよりもややアレンジの幅が狭かったり、手間がかかったりする料理としては、ピザ、チヂミなどがある。他にも、具体的な料理として知られている外国の料理や郷土料理が、実は地元ではもっと幅のある「抽象度の高い料理」として作られているというケースもあるかもしれない。
困ったら、自分の中の「抽象度の高い料理」の引き出しを開けてみよう。道が開ける。